むこうやま "熊になったわたし 人類学者、..." 2025年10月11日

熊になったわたし 人類学者、シベリアで世界の狭間に生きる
熊になったわたし 人類学者、シベリアで世界の狭間に生きる
ナスターシャ・マルタン,
大石侑香,
高野優
カムチャツカの先住民を調査していた著者が山で熊と遭遇し、重症を負うところから始まる。 なめとこ山の猟師は熊に食べられて〈森の世界〉から帰って来れなくなるが、こちらは熊とつながりを得て、共に生きていく話。 治療の一環で医療者たちから非人間的な扱いを受け、顔の傷によりスティグマを負った著者が、カムチャツカの森や熊とのつながりの中にこそ居場所をみつけていく展開が魅力的。傷によって自身と精霊や森との境界が曖昧になり、半分人間、半分熊になった著者は「共に生きる未来」を求めて旅を続ける。 購入を迷う人は解説から読むのがよいかも。著者は人類学者だが熊信仰やアニミズムを体系的に解説する本ではない。解説にあるように、著者の内側と外側で起こったことを著者の視点から描くことで、熊と人とのつながりのあり方の可能性を表現する一冊。できごとの意味をあまり追求しないほうが楽しめる。
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