
jirowcrew
@jirowcrew
2025年10月11日

カフカ寓話集
フランツ・カフカ,
池内紀
読み終わった
クルミを割るだけのことはいかなる芸でもなく、だからわざわざ人を集めてクルミを割ってみせる者などいない。だが、わざわざそれをやってみせて、しかもまんまともくろみを成功させたなら、それはもはや単なるクルミ割りだけではなくなる。あるいはたとえクルミ割りであっても、われわれはこれまでクルミ割り芸といったものを見すごしていたことになる。私たちが単にクルミを割っていただけであるのに対して、いまや登場した新しいクルミの割り手が、クルミ割り本来の本質を示してくれたということになり、しかもクルミを割るにあたって、われわれのおおかたよりも少々ぶざまであったほうが、なおのこと有効に働く。
『歌姫ヨゼフィーネ、あるいは二十日鼠族』


