
よろこびイサンディ
@yorocobi_isandy
2025年10月12日
そこに工場があるかぎり
小川洋子
読んでる
日本を代表する小説家による工場見学を題材にした本書は、メディアで誰かが勧めていて、読んでみたい気持ちになった。
ただでさえ観る頻度の少ないテレビで、この5年ほど、工場を見学する番組を頻繁に見かける。
そういった傾向とどれ程、関係があるか知らないが、その番組のエッセイ版と表現すると、イメージを喚起し易いかもしれない。
小説家が眼前にした工場内での光景を、彼女が持つ一流の感性というフィルターを介在し、事も無げに言語化されていく。
そのこと自体、本書で話題に上がる江崎グリコのお菓子工場でポッキーが次から次へと生成される過程を見るようで感激する。
言語化に対する感激こそ、このところ目撃することの多いテレビ番組での工場見学との重要な相違であると思う。
これは想像でしかないが、本書で取り上げられる工場の選定にも著者が多くの部分、関わっているのではないか。
その選定の妙も本書を良書へと押し上げるのに寄与している。
単に通り過ぎてしまう本ではなく、ある程度、読み応えもある。
ページ数は少ないから、読了まで時間を要すことはないだろう。
今月中には読了を迎えたい。