
さーちゃん
@cong_mei
2025年10月13日
読み終わった
文庫本まえがきに、「ここに描かれているのは、愚かな若者が愚かな自分に気がつき、そして世界の広さに打ちのめされる物語だ」とあった。私も明確にそんな時があったことを思い出せる。
筆者は、心の治療は時代の生んだ病いに対処し、時代に合わせた治療を提供するものなのだと書いている。今は「軽薄でないと息苦しい時代」に生きており、「だから、軽薄なものが癒やしになる」のだそう。単行本は2015年に出版されているけれど、今はもっとひどくなっているかもしれない。
読書は、そういう意味では逆をいく行為なのだと思った。問いを抱え、ネガティブケイパビリティを育てる。自分の根っこを増やし、太くしていく。
ヒーリングやスピリチュアルなものを否定する気持ちは決してないし、何かに救われるのであればそれが何であっても良いと思う。ただ、筆者が「臨床心理学」をなぜ選んだのかを自覚するくだりで、私はホッとする気持ちを覚えた。
「学問というのは本質的に常識を疑い、自分自身を疑うものだ。(中略)学問は常識が疑われ、地面がゆらゆらと不安定になったときこそ、逞しく成長することができる。臨床心理学もまた、そうやって発展してきたのだ。この打たれ強さこそが、学問と呼ばれる文化のいいところであり、野の医者文化とは違うところである。」
私も、常識を疑い、自分自身を疑える人間でいたい。無理にポジティブに考えようとするのではなく、素の自分を受け入れ、人の話をよく聴ける心を持っていたい。そんなことを考えた本だった。
