
ばるーん
@ballo____on
2025年10月14日
キッチン
吉本ばなな
読み終わった
とりわけ「ムーンライト・シャドウ」を面白く読んだ。身近な人の死という(まるで「私」以外に全く関係ないかのような)非日常を共有する孤独な魂の交流。
現代の小説のジレンマ(時に都合の良く、展開の一つにもなる社会的なシステム)というか、避けられない(避けることに一種の必然なり、面白さがある)手続きの一つとしての電話をこの小説では大胆に使っていた。「おおかた」ってのがまたいい風にも思えるし、完璧だとかえって…という作為的でお手軽な手つきにも思える。
<思い出が思い出としてちゃんと見えるところまで、一日も早く逃げ切りたかった。でも、走っても走っても道のりは遠く、先のことを考えるとぞっとするくらい淋しかった。>
から
<たとえば、今は昨日よりも少し楽に息ができる。また息もできない孤独な夜が来るに違いないことは確かに私をうんざりさせる。このくりかえしが人生だと思うとぞっとしてしまう。それでも、突然息が楽になる瞬間が確実にあるということのすごさが私をときめかせる。度々、ときめかせる。
そう思うと、少し笑える。>
この流れが「キッチン」にも通底する人生哲学なんだろうけど、この息継ぎへのときめきが「確実」と言うのに励まされる。
さらっと書いてるようで、その実お手本のような風景描写だと思う。(頻度とか長さとか)
とはいえ、「もっと、強くなりたい」にはびっくりした。今小説でこの一文誰にも書けないと思う。


