
田口為
@naseru_taguchi
2025年10月15日
旅屋おかえり
原田マハ
読み終わった
読書日記
この本の出会いには2つのきっかけがある。
1つは本屋。本選びの相談に乗ります、的なポップが置いてあるような地域の個人書店で購入。確か一応、店主と会話した末にこの本を選んだのだが、あまり会話は弾まず、慣れないことはするもんじゃないな、という記憶がある。
2つ目はこの本の作者である。
作者:原田マハ氏の父もまた作家で、私の実家にその父親の本がいくつかあり、読んだことがある。エッセイが面白く声を出して笑いながら読んでいたし、娘のこと(=マハ氏)もエッセイにあったと記憶している。
この本とは、出会いからして旅の途中にばったりと出会ったような、不思議な縁を感じたのだった。
こうして購入に至ったが年単位で前のこと。もはや何年前かも覚えていないが、買ったからには読まねば、と積んでいた本をようやく崩せた。
主人公崖っぷちからの逆転、波に乗る中の試練、試練には身内が関わっていて、主人公は味方を失う…からのラスト。展開自体は王道だと思う。
王道だからこそ、舞台や設定、テーマが好きなものだったので楽しく読むことができた。
特に一度解散したチームメンバー一同と再会する場面。漫画であれば別れた仲間と再会してラスボスを倒しに行くかのような熱さがあった。
また、主人公の会社の社長と社員が、それまで絶対的な味方として動いていた後の「らしくない」振る舞いや冷淡さの落差。丁寧に味方としての描写が濃かったからこそ印象的だった。
自分は旅行になかなか行かないタイプだが、それは計画を立てるのと、お金がかかると考えてしまうのと、体力がないからである。
無計画に外出して、ただ鈍行列車に揺られるような旅なら好きだ、と思う。
根本的にインドアなのと、生活の事情により旅立ってみたことはないのだが、少なくともやってみたいと前向きに感じる。
この本を読むことで、家にいながら旅の楽しさを味わうことができた。主人公にはあるミッションがあるので気ままな旅とは行かないが、かといって気を張ってクタクタ、バテバテではなく心から旅を楽しんでいる瞬間が確実にある。良い意味の緊張と非日常ならではの安らぎが良い塩梅の読後感だと思った。
ところで続編はないのだろうか。いかにもありそうだと思うのだが、自分は様々な読書体験をしたいので、シリーズがあったとしても一旦離れるつもりである。
出不精な自分には、読書が旅そのものなので、また別の場所に今は行ってみたい気分なのだ。