ワット
@watt
2025年11月5日

死ともののけ
斎藤たま
読み終わった
著者は在野の民俗学研究者。ちゃんと知らなかったけれど、とにかく日本の辺鄙なところを歩き続け、地域の伝承を聞き取り続けた。在野っぽさ爆発。手書きの調査カードは、東京文化財研究所に寄託されている。本書は「死」に関する各地の風習の聞き取り。
一つ一つの項目に委細漏らさず記録するのが至上命題だから、どうしてもくだくだしくなる。それでも総体を通して見えるのは、本人への哀惜よりも、魔物が寄り付かないようにするための作業が膨大にあって、それが一連の葬送の営みの中に自然と埋め込まれていたこと。誰かが死んだら、上から服を逆向きに掛けてあげる、というような些細なしぐさも、元々は意味を持ちながらも、自然とルール化してしまったから、誰ももとの意味は分からない(答えは、魔物をだますため)。
こうした一つ一つのしぐさ、人の動き、身体性を、近代化・合理化・生活改善の名目で消して来た数十年があるのだろう。