
くん
@kun
2025年10月15日
派遣者たち
カン・バンファ,
キム・チョヨプ
読み終わった
住処を奪われた人類と氾濫体との戦いを巡るディストピアかと思い読み始めると、冒頭から三分の一くらいまでは地下都市ラブバワでのテリンの日々を淡々と描いていたのに、中盤から突然、個について、意識や自我の存在について問いかけ始める。
「自我とは?」
「個体とは?」
「死とは?」
「われわれとは?」
「わたしたちとは?」
「きみが本当にひとつの存在なのか」
人間と外側との境界線が崩れることで、人間と非人間との共生の難しさ、変化と困難がテーマとして浮き彫りになってくる。
本来の自分を全く失うことなく、異質な他者との共存は難しい。自身の存在や生存を脅かす危険性がある他者を、主人公のテリンは苦悩の果てに信じ、受け入れ、変化する。
テリンとイゼフが望む2人共通の夢と未来は、そこに憎しみも加えられて到達した結末はとても美しかった。
コロナを経たからこそ描くことができた、他者との共生と個の存在について描いた作品でした。
また何年かしたら再読してその時の自分がどう感じるのかを味わってみたい。



