
ヒナタ
@hinata625141
2025年10月16日

ドラキュラ
ブラム・ストーカー,
唐戸信嘉
読み終わった
そこそこ古い本だし800pもあるし読めるかな…?と不安に思いつつ手をつけたのだけど思いのほかするすると、あっという間に読めてしまった。やっぱり名著は面白いよ。そしてホラー小説の引きは強い。
個人的に面白いと思ったのは以下の三点。
①ドラキュラものにおいて女性というのは基本的に吸血鬼の餌食となる被害者の役割のイメージだけど、本作のミーナは被害者でありつつも、吸血鬼を追い詰める(従来は男性キャラが担うことの多い)「探偵役」もしくは「頭脳」としてのキーパーソンであったこと。
②ドラキュラを滅ぼすことについてミーナが仲間たちに、「憎しみゆえに滅ぼす」のではなく「彼に同情し、憐れみの心を忘れないで」ほしい、なぜなら自分だっていつか同じ立場に立つかもしれないのだから、と説き伏せるシーン。キリスト教的慈愛がベースにあるのかもしれないけど、それこそ女は感情的だヒステリックだと言われる時代において(今もだよ)、そのパーティにおける唯一の女性である彼女だけが感情に流されない役割を与えられていることに感銘を受けた。
③〈イギリス人にとって存在するはずのない怪物が現れて自分達を脅かし、イギリスが否定するカトリックの知恵と信仰にすがることで、この怪物の撃退に成功する〉という解説を読み、生産的合理的を追求した新自由主義社会の失敗という岐路に立つ現代が重なって見えた。自分達の思い込みを捨て、今必要なものを改めて選び取らなければ、吸血鬼を滅ぼすことができないという学びがある。
わたしがこの本を読もうと思ったのはNHKの100分de名著の今月のテーマだったからだけど、決め手となったのは作者のブラム・ストーカーがクローゼットのゲイ(もしくはバイセクシャル)であったということを知ったからだ。同性愛が罪であった時代、実際この『ドラキュラ』執筆時に友人であるオスカー・ワイルドが同性愛の罪で起訴され収監された。性的指向を絶対に知られてはならないという自らの恐怖こそが、吸血鬼に噛まれながらも理性を最後まで手放さず、恐怖に抗い続けたミーナというヒロインを描く原動力になったのかもしれない。
小川公代さんによる100分de名著のテキストはこれから読むし録画も見る!楽しみ!




