授受 "ホテル・アイリス" 1900年1月1日

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@mocca1104
1900年1月1日
ホテル・アイリス
ホテル・アイリス
小川洋子,
小川洋子(小説家)
とんっっっでもない小説だった…。最近は学術書ばっかり読んでいるからそれも原因なのかもしれないけど、読む手が止まらなくてトータル4〜5時間で一気に読み終えてしまった… 夏の物語なのに、小川洋子さんの文体と、全体に敷衍するうっすらとした死の匂いのせいか、冷たい汗の滲むような気持ちで読んでたな…。 所謂ヤングケアラーとして幼少期を過ごして、いっぱしの教育も受けられずに社会から隔絶された主人公。彼女にとっての「社会」はホテルのフロントで、彼女と外の世界を繋ぐのは訪れる客。彼女が心から安らげる場所はどこにもない。腹水、血、汗、小さな頃からずっと体液と死に触れ続けていた彼女にとっては多分、それに触れる(他者として接する)ことで初めて「生きている」という実感に繋がったんだろうか、と思ったり。 翻訳家がうっすらと纏っている危うさ(病的なほどの几帳面さ、二面性)に惹かれて連れられたF島は、彼女にとって初めての外の世界。たった一人彼だけの居るその島で、彼と二人きりで睦み合う場面が、なんだか失楽園のワンシーンに見えてしまった。いややってることはハードSMなんですけどね…
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@mocca1104
個人的には川端康成の「眠れる美女」に読後感が似ている。 あっちは男としても生き物としても「死」に限りなく近づきつつある男が、何ら無抵抗の少女(=若さ)と添い寝することで「生」を実感するお話だけど。無抵抗のみずみずしい命に触れて生きる実感を得る「眠れる美女」、尊厳も身体もぐちゃぐちゃにされて死の間際に生きる実感を得る「ホテル・アイリス」、やってることも立場も正反対なのに、不思議な親和性があると思った… 彼岸に渡ろうとしていた主人公を此岸に引き戻した甥にも、死が漂っている。闇だけが広がる口、キスした時に一体どんなふうに感じたんだろう。 エロスとタナトス、なんて言ってしまうと薄っぺらくて嫌になってしまうけど、何だか無性にバタイユが読みたくなってしまった。 あとここまで真面目な顔して書いていうのもなんですけど、、セックスの描写を「腰骨の太さ」で表すの、見事すぎて唸っちゃった。
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