
碧衣
@aoi-honmimi
2025年10月19日
からだの美
小川洋子
読み終わった
イチローの肩から精密な体の連携を感じ、トゥーシューズに包まれたバレリーナの足先からは不可能を体験した肉体の感動を味わう。
棋士の指先から対戦相手はただの敵ではなく、理想の棋譜を描く協力者であり、旅の同伴者としての視点を得る。
アスリートやプロフェッショナルではないレースを編む人の手にはその人の生きた証が刻まれ、銀色に輝くオスのゴリラの背中にか弱いものを庇護する印を、地下の暮らしに無駄な毛皮を脱ぎ捨てたハダカデバネズミの皮膚に崇高さと美しさを感じる。
そして、赤ん坊の握りこぶしの中のいいお天気な世界に引き寄せられる。
小川洋子さんが見つめる美しいからだの世界。小説じゃないのに小説を読んでるようでなんとも心地良い気分だった。

