
Anna福
@reads--250309
2025年10月19日

名もなき人たちのテーブル
マイケル・オンダーチェ,
田栗美奈子
読み終わった
スリランカからイギリスへ向かう客船の旅を舞台に、最も下座のテーブルを意味する「キャッツ・テーブル」に集う名もなき人々。語り手である11歳の少年が、大人になってからその航海を回想する。
船内で悪童三人組が繰り広げる、倫理を逸脱した数々の行動―一等客室のビュッフェを荒らし、嵐の甲板に自らを括りつけたり、犬が貴族を噛み殺す事件まで―は、少年期の無邪気さと残酷さが入り混じるその描写には、大人として親の立場としては、頭を抱えてしまう。
とはいえ、静かな語りの中に潜むミステリーや、閉ざされた空間での21日間が生み出す一時的な親密さの反面、下船した瞬間、まるで夢から覚めたかのように、かつての仲間たちは「他人」へと変わっていく―その儚さ。



