くん "ヤクザときどきピアノ 増補版" 2025年10月20日

くん
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@kun
2025年10月20日
ヤクザときどきピアノ 増補版
「ずっとピアノが弾きたかった。」 そんなまえがきの一文からスタートした、ヤクザライターの鈴木智彦さんが52歳にして通い始めたピアノ初心者によるピアノ教室レッスンのドキュメンタリー。 ヤクザライターというだけに、独特の言い回しが多く、本を開いて30分後、笑いが止まらず本を閉じた。 外で読むのが危険すぎて、自宅にて一気読みした。 遅筆である鈴木さんが5年も取材に費やした「サカナとヤクザ」が校了し、ライターズ・ハイの状態でABBAの「ダンシング・クイーン」を聞いて涙を流し、猛烈に感情を揺さぶられ、 「ピアノでこの曲を弾きたい」 という思いからスタートしたピアノ教室探しでも、ヤクザライターの変なクセが出たり、随所で笑ってしまった。 そんな中で出会った『レイコ先生』がとても素敵な方だった。 「練習すれば、弾けない曲などありません」 というレイコ先生の一太刀で、鈴木さんの「ダンシング・クイーン」を弾くための日々が始まる。 レイコ先生が伝える音楽の楽しさ、弾きたいという気持ちを大切にしたレッスンは、読んでいて清々しかった。 どこまでも表現がヤクザ寄りで、歴代の音楽家を極道の系譜で語って説明されて、ますます理解できずに笑ったり、随所に世間とのズレを見せるところが、この本の魅力かもしれない。 自分の持てる語彙を懸命に使い、ピアノの楽しさ、音楽の素晴らしさ、大人になって音楽を始めるという体験を語ろうとするその姿が随所に散りばめられ、読んでいるだけで音楽の素晴らしさ、楽しさ、そして鈴木さんの音楽に向き合う真摯な姿が伝わってきた。 最終目標である発表会の結末は…ぜひ読んでみて欲しい。 発表会は2019年12月に開催され、YouTubeにも上がっている。 文庫は増補版ということで、発表会後、コロナ禍を経て鈴木さんはピアノを続けているのか、そこまでも追加されている。
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