ちょこれーと* "秒速5センチメートル the..." 2025年10月20日

秒速5センチメートル the novel
『記憶とは、なぜこんなにも、不在のかたちをしているのだろう。 思い出すのは、たしかに一緒に過ごした出来事だ。それなのに、今も色濃く残っているのは、喪失の感情だ。 言えなかった言葉。伝えられなかった気持ち。叶わなかった約束。 つまり、続かなかった時間のほうだった。 埋まらない空白は、焦燥と苦みに変わり、今に流れ込んでくる。』 『どうしたら、人は喪失と折り合いをつけられるのか。』 『偶然は、実は偶然ではない。無数の分岐の上に成り立つ、限りなく必然に近いもの。』 『何かになりたい、というより、ただどこかへ向かいたかったのだ。 確かな未来なんて描けないまま、それでも、ここではないどこか遠くへ進んでいたかった。止まったような時間のなかで、距離だけが前に進める気がしていた。距離が、未来に近づくための唯一の手がかりに思えた。』 『僕はいつも、過去の手触りや、未来の光にばかり気を取られて、肝心の「今」をどこか置き去りにしてしまう。』 いつでも「今」という時間を大事にできない。 過去への後悔や未来への焦燥に気を取られて、枷をはめられたかのように足取りが重い。行き先も定まらない中、ただただ日常という時間を浪費していく。あの頃に感じていた光をいつどのようにして見失っていったのか。この喪失感をどう埋めていったら良いのか。ずっとその答えを探すように生きている。
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