
りら
@AnneLilas
2025年10月21日
盲目的な恋と友情
辻村深月
読み終わった
@ 自宅
辻村深月作品は3冊目。
序盤は読んだことがあるはずなのに全然覚えていなかった。
蘭花を酔わす「特別な人の彼女」という属性でしか得られない優越感と焦燥感と、めくるめくような快楽。美波の下世話だけど情に厚く、ちゃっかり人の羨む仕事もパートナーも手にする軽薄さ。留利絵の根暗で承認欲求の塊で依怙地な性格の薄気味悪さ。
……どれも自分も学生時代からの数年間で見聞きしたり身に覚えすらあるけれども、今まで読んだことはなかったものが克明に描かれているようでぞわっとした。
留利絵が抱いているのは性的欲求抜きの恋愛感情に限りなく近いものかもしれない。見返りを求めてやまない、友情という名の執着。
浮ついているようで冷静に周囲を観察していて、咄嗟に的確な指摘を入れて留利絵に毛嫌いされている美波が、ある意味怖いくらいクレバーで世渡り上手で、面白い人物造型だと思った。
ミステリーとしてどんでん返しかというとちょっと違う気がするけれど、留利絵視点を読んでしまうと蘭花視点の恋愛パートはあっさり吹き飛んでしまうという点では見事などんでん返しだった。


