
冬野
@fuyuno
2025年10月23日
世界99 上
村田沙耶香
読み終わった
上巻読了。
初めての村田作品、ヘビーな読み心地だ……。
序盤は感情のない主人公の空子の俯瞰的で冷徹な視点と適応能力の高さに感心しながら読み進めていたけれど、差別やモラハラ、いじめ、性加害の描写があまりにもエグすぎて情緒がめちゃくちゃになった……それでも物語に惹き込まれてあっという間に読めた。
全体的にエグい描写ばかりだが「ピョコルン」「ラロロリン人」などの独自の単語が気の抜けた雰囲気を生み出しているため、なんとかエンタメとして割り切って読むことができている気がする。
上巻に登場する男性の9割が「男尊女卑思想が染みついていて男性社会で上手く立ち回ろうとするモラハラ気質の男性」という最悪さ!もうそういう風潮が蔓延っている世界なのか、はたまた主人公の周囲に激ヤバ男性ばかりが寄ってきていたのか……。
レナと「教祖」が二人きりでいる時のやり取りが好き。なのでその後のレナに関する事件と数年後のレナの映画のくだりが読んでいて特に辛かった。加害者側も被害者側も見事なまでに記憶を改竄して過去を美化しているの、グロテスクで恐ろしすぎる。
「世界中の人が被害者と加害者を兼ねていて、時には(加害者として)気持ち良く発散するのでバランスが取れているのではないかと思うが、加害者の自覚がない人は自分が一方的に傷つけられていると思い込んで世界を呪っているのでなんだか大変そう」といったことを主人公が独白していたことが印象的だった。
「呼応」や「トレース」を駆使して相手の望む人格で接することで生き延びてきた主人公が、自分以上に上手く「呼応」してくる相手と出会ったシーンも興味深かった。
「モラハラ気質の男性」から影響を受けた夫から暴言を吐かれている時に、主人公が「私だったら彼よりも上手くできるのに。もっとこういう言動で女性を傷つけて、それを楽しめばいいのに。いまいち手ぬるいな」と女性の効率的な傷つけ方を密かに考えているのが恐ろしかった。母親が奴隷扱いをされているような家庭で育ったうえに、幼少期から痴漢をされたりひどい言葉を浴びせられたりしたせいで主人公にも男尊女卑思想が根付いているのが見受けられて辛い。
この物語がどう着地するのか、下巻の展開も楽しみ。

