
Ryu
@dododokado
2025年10月23日
火星の女王
小川哲
買った
読み終わった
以前対談でアンディ・ウィアーとテッド・チャンの良質な部分を受け継ぐ作家が日本にも現れてほしいと語っていたが、小川哲自身がそれを目指して書いていたことも伺えるようなウェルメイドかつ王道のSF。社会構造への観察眼がするどく、かといって説明的にならず、そこに息づく人間にもリアリティがあった。ただ帯にある「誰も読んだことのない小説」というコピーに期待しすぎてしまったのか(むしろ既視感のある設定、既視感のある人物の料理の仕方が上手い小説なように思う)、物語にも文章にも大きな飛躍がないことに不足感をおぼえもした。良くも悪くもうまくまとまってしまっていて(しかしそのまとまりがすごい)、箱庭の中に人物と道具を配置してそれがどう動くのか計測して書いたような印象さえもたれる。地球と火星の距離はそうだとしても、人と人の間の距離はそういうものなのか。
