
cio
@cio_105
2025年10月21日
ムーミン全集[新版]2 たのしいムーミン一家
トーベ・ヤンソン,
山室静
読み終わった
外はもう、八月の夕闇がしのびよっています。庭がベルベットのような黒い影で満たされてきましたし、風は森の中で、ものがなしそうなため息をついています。ツチボタルが出てきて、あかりを灯しています。庭の小道をたどってくると、パパはなんだかぞくぞく感じずにはいられませんでした。
(p.170)
最後の最後の最後まで、この後どうなるんだろう? あのひとはどうするんだろう? この子は何を思っているんだろう? と想像が膨らむ物語だった。予想は何一つ当たらなくて、それがまた楽しい。語り口としては穏やかに淡々と進んでいくのに、えっ?! という驚きに満ち満ちていた。平易な言葉の組み合わせで表現される情景は、時に色鮮やかに、時に陰影の階調を伴って立ち現れてくる。モランがどう過ごしているのか、すごく気になるんだけれど、どうやらまたいつか会える日があるみたい。その日を楽しみに待とう。