
編集Lily
@edition_lily
2025年10月23日
見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録
下山達,
東えりか
読み終わった
凄まじい本だった。
プロとしてノンフィクションを読みまくってきた著者だけに、冷静かつ克明な筆でありながら、それでも全編にわたって滲み出て「しまう」絶望と不安、そして愛情の深さに何度も涙しそうになりながら読んだ。
相思相愛なんて言葉は陳腐だが、それでも相思相愛のお二人という言葉が似合うような、まだ若いカップルのような、爽やかで慎み深い恋のような愛が互いにあって、冷静かつ克明な記録からそれが溢れてくる。日常がいきなり断たれ、そこからは不慣れな情報の海のなかで頭が真っ白になりそうな状態で、にもかかわらず、一つずつ決断を迫られ、それでも人として崩れることなく、お二人はともに誇り高く最期まで一緒に歩まれたのだと思う。
近いひとが原因不明の病を得たとき、私にはとても東さんのように賢く行動できないと思いながら、それでも本書のおかげで心の持ち方や、頼るべき機関・人についての指針を知ることができた。
11月7日に『兄の終い』村井理子さんとのトークショーが開催されます。