和月 "卒業生には向かない真実" 2025年10月26日

和月
和月
@wanotsuki
2025年10月26日
卒業生には向かない真実
卒業生には向かない真実
ホリー・ジャクソン,
服部京子
読み終わって出た第一声は「あぁ……。」だった。 あとがきにも書いていたけれど、第1作目からはかなり遠く離れた所に行き着いてしまった感覚。でも、この結末に来るべくして来たような気もする。 本作は第一部と第二部に分かれていて、第一部は姿が見えない、先の読めない恐ろしさがあった。第二部は辿り着いた展開に飲まれそうになり、追いかけられるような恐怖があった。 どちらも別のベクトルで苦しくて、前者は普段挟んでいる本の栞を使って次の一文が見えないように隠しながら読み進めた。どうなってしまうのかが怖くて。後者はむしろ追い立てられるかのようにページをめくる手が止まらなかった。 著者は最後に、この作品には彼女自身が体験した「怒り」を内包していると語っていた。物語の中盤にピップが下す選択・決断は、「どうして」と思ってしまいそうになる。でも、それは著者やピップが感じた怒りも絶望も経験していないから言えることなんだと思う。 完璧で絶対的な正義なんて存在しない。同じ正義を掲げる人間の数や権力、地位、信じてくれる人がどれだけ周りにいるかで簡単に白にも黒にも変わる。 この作品は、その苦しみと偉大さをどちらも読み手に教えてくれる。本当に辛い展開だったけれど、読んでよかった。出会えて良かった!
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