
saeko
@saekyh
2025年10月28日
ミトンとふびん
吉本ばなな
小学生の頃に『TSUGUMI』を読んだことがきっかけで吉本ばなな作品を好きになり、学生時代は頻繁に手に取っていたが、大人になってからはまったく読んでいなかったから、かなり久しぶりの邂逅だった。
読み始めて、ああこの繊細さ、文章のうつくしさ、と懐かしい思いがした。ともすれば少し食傷気味になってしまいそうなメランコリックな語り口ではあるが(なにかの物語で『彼女は吉本ばななが好き』というのが皮肉っぽく使われていた記憶がある)、それがとにかくやさしい。そのやさしさがこれからの人生、折に触れて沁みてくるだろうと思った。
短編集だが、なにかを失った人々の物語で構成されている。これを読んで、周りの人に感謝したり、日常を大切にしようと思えたから、やはり物語の力はすごい。
「でもここで終わるんだったら、もっと明日葉の天ぷら食べとくんだった、おひたしも。それくらいしか思い残しがない。この人生はすごい、それってすごいことだ。誰にもわかってもらえない偉大さだが、なんて偉大なのだろう、私というこの生命体。」




