hina "アヒルと鴨のコインロッカー" 2025年10月28日

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@hina
2025年10月28日
アヒルと鴨のコインロッカー
面白かったけど伊坂幸太郎にしては珍しくイヤミスだったかな ペット殺しの若者3人の残忍さとか浅はかさがかなり全面的に押し出されていてかなり読み進めるのがしんどかった。倫理観が欠落していて人に平気で残忍なことができる人間を心の底から軽蔑しているので不快感が凄かった。伊坂幸太郎はこの残忍さと浅はかさが目立つ不快な人間を書くのがうまい気がする。というか毎回このタイプの人間が出てきてないか? 琴美が死んだ後で見るドルジの「死んだら生まれ変わるだけだから」とでも言うかのような最期にはかなり泣きそうになった。綺麗な畳まれ方だった。 伊坂幸太郎節のつまった台詞回しは今作も確かに出てきてはいるんだけど内容のショッキングさが強くてあんまり目立っていなかった気がする。 河崎はかなりクズ男だったな。クズ男は女を抱けなくなったら今世に未練は無いとでも言うかのように躊躇なく死ねるものなのか?と思ったけど自分がうつした病気で死んでしまった女の子が出てきたから死を決意したみたいなのでしっかり「因果応報」が自殺理由なんだなと思った。かなり「因果応報」がそのまま現れているように見えつつも、何も悪いことをしていない琴美が亡くなっているので、やはり「世の中は滅茶苦茶」なんだと再確認した。 麗子さんが殴るまで怒りを覚えた相手を店員として雇ったのはやっぱり「救えるものは救わないと」と思ったからなのだろうか。救えたはずの琴美・河崎を失った麗子さんができることは見た目を理由に犬を返品してきた女を店員として雇うこと、バスでかなり強面な男に痴漢されている女の子を一人で救うことだったのかもしれない。結局この後ドルジも亡くなるんだからやっぱり河崎の言う通り「世の中は滅茶苦茶」なんだな。 椎名はあまりにも簡単に罪を犯しすぎだからな。仮にドルジが殺人をするから手伝ってって言っててもなんやかんや言って助けてそうだもんな。そういう浅はかさはペット殺しの3人と共通する部分として出されていたのかもしれない。 ドルジが麗子さんには気をつけろって忠告したのはなんでだろう?河崎を名乗っているのをバレたくないから? もう1回読み直してみたら2年前の会話を現在でも使ってるのね。滅茶苦茶のくだりもだけど車のクラクションと細かいことは気にしないのくだりもやってて、ドルジはまだ2年前の生活に縛られているんだなと思った。ほんで難しい言葉は理解できてないのも漢字が分からないのもちゃんと伏線として描かれていてやっぱり伊坂幸太郎は天才なんだと思った。あとさんはいらないって言ってるのも河崎がさんをつけたら仲良くなれないみたいなことを言ってたからなのね、ほんで丁寧語で喋るからちっとも親しくなれないガイジンはドルジのことだったのね。死から復活したんだ、は河崎への思いがそのまま反映されてるのかな。ほんでドルジは隣の隣の家のガイジンの件もも101号室にアジアの国の外人が住んでる、も何一つ嘘をついてなくてやっぱり根は心優しいブータン人のままなんだなと思った。河崎がドルジに出したシャローンの猫の課題もちゃんと椎名の前でスラスラ喋ってクリアしてるのも伏線になってたのか。 全部伏線ですごいのはいつも通りだけど今回はなんかメリーバッドエンドというかなんというか、ちょっとだけ悲しい物語だったな。
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