汐見 "村田エフェンディ滞土録" 2025年10月28日

汐見
汐見
@siomi250927
2025年10月28日
村田エフェンディ滞土録
知人に紹介して読んでもらっているので自分も再読。 この本は、自分にとっての「今までに読んだ全ての本の中で一冊選ぶとしたら」。10年くらい前に読んでからずっと。 初読で涙が滲んだことをよく覚えているし、再読するたびに改めて好きになる。 異国情緒と思索に満ちた本。ユーモアもある。 不思議なタイトルだと思うけど、「エフェンディ」とはトルコ語で主に学者など学問を収めた尊敬される人につける敬称らしい。考古学者・村田青年のトルコ滞在記。 19世紀末のトルコにて、英国夫人の下宿で暮らす日本、ドイツ、ギリシャの青年学者たちと、同年代の使用人のトルコ人。若者たちの対話と友情。歴史・宗教的に一致しない部分が多々ありながらも一先ずの折り合いをつけるさまに優しい知性がある。 そして絶妙な合いの手を入れる不思議な鸚鵡。 歴史と地続きで生きること、自分を保ちながら相手を受け入れること、戦争の虚しさ、など。 亡霊や神秘的な存在がやんわりと受け入れられる描写も大好き。なお本作は『家守綺譚』の姉妹作。そちらが好きな人はぜひ。 ものすごく個人的な好みとして、文庫版は新潮文庫の組版が読みやすく感じる(角川文庫版も購入済)。ご参考まで。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved