
ゆうき
@madoromi_y
2025年10月30日
約束された移動
小川洋子
読んでる
約束された移動(表題作)
小説の面白さ、文字で物語を読むことの嬉しさにひたひたと浸かることのできる文体が、良い~…
ホテルのロイヤルスイートに泊まりにくるハリウッドスターとその清掃員の話。
清掃員がその客の泊まった痕跡を見つけたり、あわよくばそれを彼と自分だけの秘密として一方的に温めている様子は、ともすれば一種のストーカー行為のようにも思える。けれど不思議とそれが不快だと思わせないようなささやかで魅力的な文体が巧妙。穏やかでささやかな話のようでいて、ある種の独占欲めいたものがちらつく不思議な話。面白い。
彼がどういう意図で部屋の本を持ち出していたのかは分からないけれど、そこに(勝手に)意味を見出そうとして彼のことを知ろうとする清掃員のある種の健気さと、つい追いかけたくなってしまうような彼自身の危うくて美しい暴力的な魅力(を清掃員が勝手に見出している)のアンバランスさが良い。