
jirowcrew
@jirowcrew
2025年10月31日

特性のない男: ウルリッヒとアガーテ
ローベルト・ムージル,
大川勇,
白坂彩乃
ちょっと開いた
「アガーテの理解しがたい振舞いは、生を否定したいという誘惑が次第に鬱積していく状態のひとつしか説明できない。そうした誘惑に駆られるのは、自分が何をしたいのか自分でもわからない人びとであるらしいーーこの確信はもはや彼の心を去ることはなかった。」
2巻29章
生を否定したいという誘惑。
ああ、これはほんとうにそのとおりだと
左の頬を思い切り掻きむしる。
ああ、これが生の肯定か。
無意識に傷つけた頬の熱さ。
いずれにせよ、彼の「生を否定したいという誘惑」がもたらした振舞いは、彼自身にも理由はわからなくとも大いに意味のある行為であった。それはムジールの筆により書き記され、世界の人々に読まれることになるのだから。
それは生を肯定した。
良くも悪くも、すべては愛の側に絡め取られてゆくということか。