花木コヘレト "まとまらない言葉を生きる" 2025年10月31日

まとまらない言葉を生きる
まず、amazonでもreadsでも、びっくりするくらいの評が付いていて、驚きました。障害者福祉にも関心を持つ方が多いのは、ハンセン病に関心のある私にとっては、うれしい驚きです。 次に、不満点を述べておくと、著者の問題意識のあり方が、ステレオタイプかなあと思いました。語り口が柔らかいのは、文章が読みやすくなるので良いのですが、問題点を鋭く言葉で掴むのに、問題意識の曖昧な出発点は、分かりやすいリベラル一般の意識のそれでした。だから、著者の言葉は、充分過ぎるほどマジョリティのもので、決して「まとまらない言葉」ではないのではないか?と疑問を持ちました。本書に示された問題意識は、著者の独自の問題意識とは呼べないと思います。歴史的に繰り返されてきている問題意識、と言えると思います。 にも関わらず、著者の優れた点は、歴史に埋もれている言葉を丁寧に拾い上げている点と、鋭い問題提起を提出できる点にある、と思います。特に後者の問題提起については、p136にある「文学者の仕事は「無い言葉」を探すことだ」という鋭い指摘があります。著者の非凡な能力を示す指摘だと思います。僕は詩を書く人間なのですが、まさに詩とは「この世にまだ無い言葉」を造形する作業だと思いますので、著者の鋭さには深く唸らされたところです。
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