
堺屋皆人
@minahiton
2025年10月23日
一次元の挿し木
松下龍之介
読み終わった
2025年
ミステリ
なぜ、本作が「このミス大賞」グランプリじゃなかったんだ……?という事が一番のミステリ。
ーヒマラヤ山中で発掘された二百年前の人骨。大学院で遺伝学を学ぶ悠がDNA鑑定にかけると、四年前に失踪した妹のものと一致した。ー
なんやこの謎、大好物!はい、優勝!
とあらすじだけで思ったくらい、魅力的なフック。
さすがこのミス……だけど、大賞ではなく文庫グランプリらしい。
あらすじに惹かれながらも、これだけ強い武器がありながら、大賞逃すような致命的な欠点でもあったのだろうか?と思って読んでみる。
いや?なぜ?ホント、私がこの賞に期待している要素が全部備わっているんだが……?
魅力的な謎、ページを捲らせるドキドキの展開、大風呂敷の畳み方、え、これ一位じゃないんだ……?
この回の最終候補作、出版されたものは全て読んだし、最終候補作品の選評や各作品の解説も読んだけど、このミスに期待される作品てこういうのじゃないの?少なくとも私はそう。
面白いで言えば、他の候補にも面白いのはあるし、私の好みもあるんだけど、「このミス」らしさとか「このミス大賞」の納得感を備えているのは、この作品だと思うんだけどなぁ〜。
確かに、真相のヒントが具体的な数字や思い出話や表紙やら至る所で大盤振る舞いなので、「たぶんこうなんだろうなぁ」と誰でも思うし、実際そうなんだけど、単なる答え合わせの為にページを捲らされている感覚にならない展開の上手さに、「話の転がし方がうめぇなぁ!読ませるねぇ!」となりながら終始読み進められた。
前半、初っ端から投げられる魅力的な謎にグイグイ引きこまれ、中盤は登場人物たちの思惑と駆け引き、背後に迫ってくる不穏な空気、どんどん不安が広がって、謎の真相に見当がついたとしても、次の展開や話の結末はどうなるんだろ…という興味が失われず、読む手が失速しない。
後半はバイオハザード3でネメシスに追われている時を思い出すようなドキドキの連続でした。(殺人犯の登場を表す効果音の使い方も上手い)
話の畳み方も好き。こういう結末もすき。私はね。(ワンチャン続編も望める結末だし。)
映像化しても絶対面白いヤツやん。しないかなぁ。できれば映画化。
一つだけ残念だったのが、私の推しが序盤に少し出てきただけで出番終了だったことwエピローグに出てこないか期待したのに…残念無念w
そういう意味でも続編希望。
