
堺屋皆人
@minahiton
2025年10月6日
白魔の檻
山口未桜
読み終わった
2025年
ミステリ
『禁忌の子』に続く<城崎シリーズ>二作目は、霧と毒ガスに覆われた病院×不可能殺人のクローズドサークルミステリ。
前作が、私好みの魅力的な謎とヘビーなテーマでもエンタメとしてラストまで面白く読めたので、今作も発売前から期待していた。
ー霧とガスにより孤立した病院で不可能犯罪が発生して──。
現代ミステリでは、まずクローズドにするのが大変で、現実味を残しつつ、でも魅力的に、閉鎖され外部と音信不通の状況を作らないといけない訳ですが、「なるほど、こいつは美味しそうな舞台だ」ってあらすじ見てなった。
例えば登山中に濃霧に覆われて山荘から出られないとかと違って、舞台となる病院には患者がいて、当然、閉鎖された状況になっても医師たちによる医療行為が行われている現場でもあるわけで……。
彼らは容疑者でありながら、主人公たちにとって、全員守らなければいけない命でもあり、その為に絶対協力しなければならない人たちでもある、というのが面白い。
事件が解決されないまま第二の事件も発生し、霧も晴れず、ガスも溜まっていき……どんどん物理的にも精神的にも追い詰められていく中で、疑心暗鬼になっていく医療スタッフたち、不安を爆発させる患者たち、ガスのタイムリミットと医療の停止による命のタイムリミット……前作とは違う角度からヘビーでした。
著者の現役医師というスペックを活かしたお仕事モノ小説としても興味深く、災害医療や僻地医療を考えさせられる。
コロナ禍や震災で浮き彫りになった問題点や、医療を受ける側の認識、色々と斬り込んで描かれているが、そこは流石の説得力ですよ。こういうのは医療従事者でないと書けない。(素人が調べて書いてもきっとペラペラになる)
そのリアルさが小説としての厚みを持たせていると思う。
医療用語解説のおかげもあり、専門用語のオンパレードから始まった前作より丁寧に説明がされていて、今作は医療シーンも置いてけぼりにならずに読めるので安心。
今作の語り手兼城崎先生のワトソン役は、前回ちょい役だった研修医の春田さん。
そのせいか、城崎先生の顔面偏差値の高さを伝える描写が増した気がするw(前作は友人関係だから表現が直接的じゃなかったから?)
前作の語り手であった武田先生は、続編難しいかな?と思っていたけど、少しだけ出ていて嬉しかった。
ここから少しネタバレ。
犯人の絞り方とかは犯人当てモノっぽい作りになっていて、挑戦状こそ挟まれないけど、会話中で前提条件などを整理して、推理する箇所を提示してあるので、謎解きチャレンジは可能。王道ストレートな犯人当てでした。
ただ、犯人さん証拠の隠滅は他に方法あったやろ……とも思ったので、真相の全てに納得するかは読み手次第ではないかと。
単に私は作品に書かれている以上、その世界ではそうなんだと思って納得するタイプなので、気になっても、その作品に対する評価は下がらないですけど。
犯人については、状況的にどんどんクロになっていく中頼むからこの人どうか犯人でありませんように……と願いながら読んだ。
まあ、そういう人が犯人な方が物語として面白くなってしまうからしゃーない。
ともあれ、今作も面白かった!
謎は前作のほうが魅力的だったけど、それでも小説としては今作の方が好きでした!
次回作も楽しみにしております!


