
花木コヘレト
@qohelet
2025年11月1日
詩の誕生
大岡信,
谷川俊太郎
読み終わった
図書館本
詩
対談
内容が面白く、分量も少ないため、一気に読み終えられました。「詩の誕生」というタイトル通り、私たち人間にとって、詩がかけがえのないものとして生まれた、として捉えられていました。詩を愛する者として、豊かな感情に包まれた感覚を持ちました。
詩の誕生とその死が、冒頭では語られていますが、本書の主な内容は、大岡さんと谷川さんの詩作秘話です。自動筆記や、他の創作契機の話などが、ふんだんに話されています。詩を書く人は関心の高い話ではないでしょうか?
私としては、大岡さんが心理的・情緒的な人で、谷川さんが即物的な人、という対立がとても面白かったです。確かに谷川さんは少年的で、大岡さんは壮年的だと、私も思うからです。あと、二人とも認めていたのは、谷川さんの詩の言葉が、恐ろしいくらい「正確」だということです。本書では、谷川さんの「コップへの不可能な接近」が取り上げられていて、この詩は散文なんだけど散文を超えている、というような話がありました。僕も谷川さんの、ある種ザッハリッヒな言葉の態度は、すごく気になっていて、読んでいて体調が悪くなることもあります。大岡さんの詩の方がやっぱり僕は好きだな、と認識を新たにすることができました。
それと、実にその通り!と膝を打ちたくなったのは、日本人の口語自由詩には、もう七五調は永遠に戻らないという指摘です。僕も、児童文学を除く、文学や詩の言葉は、リズムとかが生きていなくて全然いいと思っていて、特に私たちの肉体に根付く言葉は全部死んでいて良いと思っています。谷川さんは健康な言葉を欲しているみたいでしたが、僕は、文学の言葉は病んでいて良いと思います。
そういう意味で、自分が詩というのは立ち枯れてしまって良いと思っていることが、本書を通じて分かりました。生きている言葉を求めるのか、それとも死んでいる言葉で耐えるのか、というのは、創作活動をしている人間にとって、大切なテーマだと思うので、本書を読んでよかったです。