
本屋lighthouse
@books-lighthouse
2025年11月1日

失われたいくつかの物の目録
ユーディット・シャランスキー,
細井直子
読み始めた
記憶とか書き残すとかそういったことをテーマにしたものを読み続けていたこの数ヶ月のような気がして、自然と本書が選ばれた。
記憶に残ったのはある奇妙な状況、つまり居住地の中心にマルクト広場ではなく、緑なす若い菩提樹の木陰に、鋳鉄の柵に囲われる形で墓地があるのを発見したことだった。(中略)。彼女は台所で料理をしながら、早くに亡くなった息子の墓を垣間見ることができるのだった。(中略)。デンマーク語で「小さな島」とか「水に囲まれた」という意味の名前を持つこの場所に住む人々は、同じくらいの緯度の国々で通常行われているように、共同体の内部から市門の外へと死者たちを追放する代わりに、死者たちを文字通り町の中心に迎え入れた。だからこそ、より生に近いのだと。(p.11〜12)
エマ・ドナヒュー『星のせいにして』(河出書房新社)を思い出す。あの小説における死も距離が近かった。そして死は閉じ込められていた。病院の地下に、あるいは病室に、とにかくグッと押し込められ、押し込められるがゆえに忘れられていた。それとも忘れるために、ないものにするために、そうしていたのかもしれない。町の中心にある死と、病院の中心にある死は、明らかに違うものらしい。そして墓地がすぐそばにある暮らしというのは、幕張の祖父母がしていることであり、週に数回そこに行っている私もまた、その暮らしの範疇にいる。












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すべての本と同じように、本書もまた、何ものかを生き延びさせたい、過ぎ去ったものを甦らせ、忘れられたものを呼び覚まし、言葉を失くしたものに語らせ、なおざりにされたものを追悼したいという願いによって原動力を得ている。書くことで取り戻せるものは何もないが、すべてを体験可能にすることはできる。(p.25)