カササギ "赤と青とエスキース" 2025年11月3日

赤と青とエスキース
再読 エピローグまで読んで、これをオムニバス形式のようにして映画にしてはどうか…とか考えたことを思い出した。同じ登場人物が他人行儀な顔をして他の章に登場し、ああこの人あの人だったのか!という発見があったから。 再読して気が付いたのは時制がごちゃ混ぜにはなっていなかったこと、目次の章の順にちゃんと時が経っていっていた。そしてエピローグとプロローグを除いて1章目と最終章が同じ強さ、というか、やはり注力して書かれたものだろうと感じられた。 書き下ろしだからか一冊としてのまとまり感があるし、表紙も秀逸。絵を見にいくのが好きな私に同僚が薦めてくれた本だが、タイトルだけでその表紙を思い出したから、それだけ印象に残るインパクトのある装丁だった。 最初に読んだときと同じで、やはり映画にするならエピローグのシーンから始めるのが良いだろうと思う…でも、この物語の主役は、タイトル通りエスキース、一枚の絵だったのだな、と感じた。 人の手から手へこの絵が渡り歩き、あるべき場所へ掛けられてこの物語もようやく閉じられる。一枚の絵がもたらしてくれるstoryは豊かで大きく永遠を感じさせるほど長い時間を内包している。 良い絵の前に立つ時の感慨を思い起こさせてくれる良作、やはり芸術の秋を贈る物語として、この本を贈ることにしよう。
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