🪩 "正欲(新潮文庫)" 2025年11月5日

🪩
@mn09
2025年11月5日
正欲(新潮文庫)
▼ややネタバレあり▼ 結構読むのがしんどかった。 水、のようなマイノリティでは無いけど、大多数側ではない自覚が大いにあって悩んだり苦しんだりしたこともあり理解できる感覚があるので、悩む人たちを読み進めていくのが苦しかった。オチも分かっていることも相まって。 「躊躇なく川に飛び込めない」、自分の立ち位置を常に確認し続ける感覚。 そのなかで夏月と佐々木がお互いの輪郭を強くするために、繋がっていくのは良かった。 物語の終盤では、私は八重子が無理で最後の方は流し読みしてしまった。諸星にわずかな光を与えられたのは良いとして、彼女がやっていることはそれこそある種ストーキング行為であって、私はその生々しい欲と正しくはある意見の温度差に「いやいや」と思ってしまった。そういう構図として描いているのかなとは思ったけど。 多様性や理解というのは重要だと思うけど、人は誰しも直感的に本能的に不快に思ってしまうポイントがどうしてもある。読みながらそうも思った。 話は逸れるけど、そもそも最近多様性=人から外れてても良いんだよみたいな肯定のベクトルが、個性的なファッションやメイクであったり、世の中に迎合せず思ったことややりたいことをやっていい文化みたいになって来ているのがあまり好きじゃない。 そうじゃ無い人はつまらない、個性がないみたいなラベリングがされていき、結局「正解の側」を押し付ける風潮になっていると感じる。 それゆえ複数の登場人物や客観的視点からマジョリティの人間とはどうなのか捉えていく感じは面白かった。 自分たちが大多数側だと思っている人たちもセックスのことの「正解」がわからないから確かめ合うという辺りとか。 ポインティが「猥談の面白さって、性欲とか性体験って人によって千差万別なのに、表面上では絶対分からないし隠されてるからこそ面白い」 的な話をしていたのを思い出した。
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