
イロハ
@iroha_mellow
2025年11月6日
ギリシャ語の時間
ハン・ガン,
斎藤真理子
読み終わった
視力を失う未来が決まっている男と、声を失ってしまった女が、もう使用されていない古典ギリシャ語の講座で、講師・生徒として出会う。
ふたりが本当の意味で交差するのは最後のところだけ。物語の終盤まで、ふたりはそれぞれに、生に対する苦しみや悲しみにもがいている。
ハンガンの静謐な表現がとても巧みで、読みながら何度となく瞼を閉じてその情景を思い浮かべながら読んだ。
声を失った女の沈黙について、
「肉体を失った影のような、枯れた木のがらんどうの内部のような、隕石と隕石の間の暗い空間のような、冷たくて稀薄な沈黙だった。」
と表現していたのが、特に印象的だった。
