
花木コヘレト
@qohelet
2025年11月6日
明石海人歌集
明石海人,
村井紀
読み終わった
図書館本
短歌
ハンセン病
最高の一冊でした。でも収録されている歌の3割もわかっていないです(笑)。それに私自身が歌集というものを読み終えられたのは初めてで、なんと言っても読解に時間がかかります。サッと読んだだけだと短歌が全然頭に入って来ないので、何度か読むんですけど、そうすると全然ページが進まないというストレス(笑)。それでもハンセン病の本で一番好きな本になりました。村井紀さんの解説も、グイグイ引き込む文章でした。
解説を私なりに要約すると、「海人はハンセン病を生きると同時に生きさせられていたが、それを余裕を持って引き受けた上で、作歌に勤しんでいました」ということだと思います。だから海人の文学は、明治近代国家や医師からの抑圧の元にあったという意味で、おのずからその限界が可視的なのですが、私にはその可視的な限界が非常に魅力的に映るのです。
つまり、海人は逆らわなかったわけですね。長嶋愛生園の意思に従ったわけですね。しかしこれが極めて大切なのですが、逆らわなかったと同時に戦っていた。これが私には素晴らしいと思うのです。つまり、誰だってその時代や状況の枷に縛られているけれど、人間が戦うべき相手はその枷ではないと、私は思うんです。ハンセン病という一つの運命があって、その運命に国家や医師のエゴとか税金のように乗っかってくる。でも、それが戦うべき相手ではない。海人はその戦うべき相手を取り違えなかったという意味で、苦しい状況の中でも聡い目を持つことが可能であるということを、私たちに示してくれていると思います。
私が一番好きな歌はこれです。
「蒼空のこんなにあをい倖をみんな跣足で跳びだせ跳びだせ」p157

