
もん
@_mom_n
2025年11月6日
わたくし率 イン 歯ー、または世界
川上未映子
読み終わった
心に残る一節
@ 図書館
まさに純文学。とにかく力が漲っている。奇妙で独特な文体は難しくて体力が要るけれど、なんとか食らいついて理解したいと思わされる。ラストの勢いも凄まじい。
p.23
ところで言葉というのはすごいわね。これはまえにも云ったけど言葉にすれば象もこんなに小さくなるのやよ。
p.33
子供のころも、道で人とすれ違うようなときも、ああ、あの人が見ているものをあの人の視力を使ってお母さんはぜったいに見ることはできないのだなあ、そのようなことをぼーと考えていると、なにかとてつもなく大きな大きな鉄板のようなものが青空に蓋をするようにゆっくり降りてきて、わけがわからなくなって恐ろしくなって、それでそのままぎゅうと押されてぺらぱらになってしまうような、そんな気持ちになったものです。
p.99
そうや、わたしは、いつもこうやってきたんやった、痛かったり悲しかったりどうしようもないもんがわたしに入ってきたときは、誰にも絶対潰されへん、わたしがどんなに傷つけられてもぜったい傷つけられへん私を入れた、勝手に決めた奥歯の中に、痛みの全部を移動させてぜんぶ閉じこめてきたんやった、わたしは歯が痛くなったことがないのやから、そこに痛みを入れてしまえば、わたしはどっこも痛くなくなる