本屋lighthouse "キッチン・コンフィデンシャル" 2025年11月7日

キッチン・コンフィデンシャル
キッチン・コンフィデンシャル
アンソニー・ボーデイン,
野中邦子
ディミトリは不吉な予言をした。食事の真っ最中にテーブルの上で崩れ落ち、どろどろと煮えたぎったホワイトシチューが溶岩のようにあふれだして、逃げまどうお客の膝に流れ落ちる。ひどい火傷になり、きっと「傷跡が残って・・・・・・裁判沙汰になり・・・・・・世間に顔向けできなくなる」。万が一そんなことになったら日本軍人のように責任をとって自害すればいいだけの話だと心を決めて、ディミトリはやっと気をとりなおした。「あるいはヴァテールのようにね」と彼は付け加えた。「魚料理を出すのが遅れたという理由で、彼はみずから剣の上に身を投げたんだ。それしか道はない」。(p.59-60) ヴァテール!また会えたねヴァテール!今年3回目の遭遇。存命の知人よりも数世紀前の死人と顔を合わせている私はといえば、シェフ(ひろこさん)不在のなかテキトーに調理し味のしない野菜炒めを誕生させていたが、私の王は私なので自害することもなく、その夜ウエルシアにて半額になっていた青椒肉絲の素を買った。「ピーマンを入れるだけ!」とあるが無視して冷蔵庫の玉ねぎとネギを入れた。問題なくおいしい。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved