Ryu "プレイグラウンド" 2025年11月8日

Ryu
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@dododokado
2025年11月8日
プレイグラウンド
プレイグラウンド
リチャード・パワーズ
パワーズの海洋×AI小説。これまでいろいろAIを題材にとる小説が書かれてきたが、その中でも群を抜いておもしろいし、またたくらみに満ちたフィクションだと思う。貧しい家庭に生まれてやがて文学を志す黒人の少年ラフィ(『巨匠とマルガリータ』が愛読書)、彼の友人で、裕福な家庭に生まれ育ち巨大IT企業を設立する白人の天才少年トッド、南太平洋の島に生まれ、『ナショナルジオグラフィック』の表紙にも選ばれた海洋生物学者の女性イーヴリンの3人の半生が絡み合いながら物語は進んでいく。だがこれはどこまでもラフィとトッドの友情の話で、そこにめちゃくちゃ引き込まれる。 日本でも『トランスパシフィック・エコクリティシズム』(彩流社・2019年)という論集が編まれたり、英語圏を中心にして「環太平洋」を枠組みにネイションを超えて文学テクストと自然・社会の関係を考えようという試みが最近ますます増えてきているが(Elizabeth DeLoughreyなど)まさにそのど真ん中の小説ともいえる。つまりたとえばこの小説はエンタメとしても申し分なくおもしろいのだが、『白鯨』や中島敦の『南島譚』と並べてみたときにいっそうと輝いてくる小説かもしれない。(蟹もでてくる)
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