綾鷹
@ayataka
2025年11月8日
酒を主食とする人々
高野秀行
エチオピア南部の酒を主食とする民族をTBS「クレイジージャーニー」で撮影しに行った紀行文。
コンソ民族、デラシャ民族の取材内容についてだけでなく、出国不能、緊急搬送、ヤラセなどなど・・・旅の中で起こる予想外の出来事に思わず笑いながら読んでしまった。
デラシャ人の生活を知ると、自分が常識だと思っていることへ疑問を覚える。
「酒は健康に悪い」と決めつけるのではなく、その周辺(脂っこいもの、塩分の多いものを取っていないかなど)も見る、「全体」を見る視点が大切だと思った。
自分もミクロの視点だけになっていないか気をつけたい。
【衝撃を受けた内容】
・デラシャ民族はパルショータと呼ばれるお酒を主食としており、朝から晩までパルショータのみの摂取で済ますこともある
・酒は煮炊きする必要がなく、1日陽にさらされていても傷まない。好きなときに好きなだけ飲める。パルショータは食事と水を兼ね備えたスーパードリンク
・5歳の子供もパルショータを飲む
・妊婦も推定アルコール度数4%程度のパルショータを飲んでいる
・肝臓疾患や高血圧、糖尿病など、酒をたくさん飲む人がかかりやすい病気がデラシャ人に多いというデータはなく、パルショータが健康に被害を与えていると示唆する兆候やデータはない。また、デラシャでは子供の栄養失調が極めて少ない。
・デラシャ人は油を摂取しない。砂糖も塩分もほとんど取らない。もっと言えば固形物の摂取量が少ない。
・近くには様々な食材を食べる民族がいるが、デラシャは決まったものを毎日毎食食べている(あえてその食生活を選んでいる)
【印象に残った内容】
彼らは決して「遅れている」わけではない。「自然と共生している」わけでもない。コンソ人もデラシャ人も強烈なデベロッパーであり、自然を作り替え、コントロールしようとしていた。
酒を主食とする食生活もやむをえずそうなってしまったのではなく、意識的につかみ取ったものだろう。その意味では現代の日本人や西洋人と同じだ。ただし、「進んだ方向性がちがう」のである。だから西洋文明が世界基準になってしまった今、「遅れている」ように見えるだけだ。