
reina
@dawn_39
2025年11月3日
ミトンとふびん
吉本ばなな
読み終わった
なんというか、とても軽やかな本。
人生はつらいことが多い、でもそれを無理にどうこうするわけでもなく、乗り越えるというのでもなく、ただ受け入れていく、そんな軽やかな物語たち。
p90
相手の好きなところを好きなままにするには、距離をちゃんと丸く置くことだと私はいつのまにか思うようになっていた。
p105
人はこんな気候の中でも暮らせるように、工夫して、注意して、がんばってきたんだから、大丈夫だよ。
歯をちゃんと毎回磨けば、虫歯にならないだろう?それと同じなんだ。
気をつければ、こんなすごい温度の中でも人は生きられる。まるで毎日があたりまえにあるかのように。備えればいいんだ。それが人間の力なんだ。」
それと同じ。命取りになりかねない要素満タンのカップルでも、ちゃんと不幸に備えている心がまえだから、私たちはまだいっしょにいられる。
道を探せる。
p133
自分の人生を受け入れるだけ、生きていることを認めるだけ。
p137
だれかが認めてくれたなら、それが会っていなかった父親であっても、異国の見知らぬ人たちであっても、私たちはいっしょにいていいという自信を育てていける。
それは地球が丸いからだ。それと同じように、あちらの世界もこちらの世界も、よその人と母たちの感想もきっとみんなつながっている。
p174
私は、この絵のような永い時を生きることはできない。それでもまだ旅の途中であり、人生というのは決して明るいものではない。むしろ暗い勢いを持って、茨の道をただ歩んでいくものなのだ、それは良きことであり、それでいいのだと、聖マタイの表情を見ていてしみじみ思った。
p201
なにも伝わらなくていい、悲しみは私だけのものだ。
p215
本格的に壊れたり朽ちたりするまで、だいじに手入れをしてその人の生活の一部になって。
そういう時間の使い方を人もものも取り戻せたら、身の丈に合った健やかなこの気持ちが自分の周りにも満ちていくような、そんなイメージがある。
p219
自分の人生は失敗だ、なんでこんな迷宮に入ってしまったのだ、と思う。
人の気持ちなんて、そんなものだ。真実は頭の中には常にない。
真実は流れついた状況の中にだけ、全て存在する。
p247
だいじなのは、突き詰めないこと。
私は間違ってない、間違った人たちといっしょにいるんじゃない。
そんなことは、自分にしかわからないのだ。
自分に自信を持つってそういうことだ。