
徒然
@La_Souffrance
1900年1月1日
複眼人
呉明益,
小栗山智
読み終わった
装丁に惹かれて読み始めたけれど、文章が想像以上に凄かった。頭の奥が痺れるような感覚。
作者が環境問題に関心のある人らしいけれど、読むあいだはそれに関連付けて読み解くことはせず、ただ流れに身を任せてページをめくった。
読後なんとなくSEKAI NO OWARIの虹色の戦争という曲を思い出した。
それから自然と、作者が環境問題をどう考えているのかに思いを馳せた。多声的に描くことで、二項対立が緩まる気がした。しかしなんというか、多くの登場人物が現れるものの、それぞれが役割的だったり、限られた人間関係の中で描かれていたりする印象もあり、それの意味を測り兼ねている(意味……というのは言葉が過ぎるけれども)。
以下は環境問題以外の感想
アトレや先住民の人々など、自然とともに生きる者たちの描写を美しいと感じると同時に、どこか後ろめたさを覚えた。
なぜなら文明の側に立つ私は、ときに自然と共にある他者を理想化し、純粋さや調和をそこに投影する。そうしたロマン化のまなざしは、一見すると共感のようでいて、支配の歴史と隣り合わせにある可能性をもつ。「自分たちは文明化された存在である」「彼らは自然に生きる原初的存在である」という上下関係や、「自然と共に生きることこそ素晴らしい」というような美化というかたちをとった支配。自分が感じた憧憬がこれに近いものなんじゃないかと思って。


