
碧衣
@aoi-honmimi
2025年11月9日
小箱
小川洋子
読み終わった
死んだ子どもはガラスの小箱の中で成長する。
彼らを愛する人たちは彼らの成長に合わせた必要な物を入れ替える。
一度、役割を終えた幼稚園と郷土史資料館が子どもたちの魂の成長する場所という新たな役割を担っている。
遺髪を竪琴の弦にする。月に一度、幼稚園の遊具を使う。わが子が歩いた地図の世界の中で暮らす。彼らを愛する人たちが証明する彼らの存在と不在。
子どもたちは一体、どこへ行ってしまったのだろう。
“私”の視点で見た子どもたちの無防備な愛らしさ、子どもを想う人たちの痛々しいほどの愛に何度か泣きそうになった。
169頁の「ただし従姉と私にとって、一人の作家の死は、世界の欠落ではなく広がりを意味した。新しく読むことのできる本が増えるのだから、死を悼む心の裏側にはいつも、読書の喜びが控えていた。」は本書の中で印象的な一文だった。


