小箱

14件の記録
- あるく@kinokonomorimori2025年10月9日読み終わった感想ある街で、廃園となった幼稚園を管理する主人公。講堂には郷土歴史資料館から持ち出したガラスケースが並び、なかには命を落とした子供達の未来が展示されている。 幼稚園、郷土資料館、演奏会、すべてが弔いとして機能している街。産声はもうあがらないのか、産婦人科医院は爆破解体されてしまっている。 弔いの番人である主人公が、それにふさわしく身体を小さく折りたたまれていく描写と、口で咥えたペンで架空の手紙を書くシーンが好き。 誰も悲しい、寂しいとは言わない。ただ時が止まった街があるだけだ。反面、ガラスの小箱で暮らす子どもはすくすくと成長していく。人形のお友達ができ、ミニチュアの教材で学び、結婚する。 亡くなってしまった子ども達の親がメインの話だが、焦点が過去ではなく、子どもたちの未来なのが良いと思った。それは決して空白でなく、今日も小箱のなかで綴られてゆくのだ。
- 雪柳@yukiyanagi06252025年9月19日読み終わった@ 自宅切ない追悼の物語だった。 世界観とか背景がほとんどわからない。むしろこの小説には、そういう物は不必要だと感じた。 だからこそ、泣きたくなるくらい死者を悼むことができると思った。死者を悼むには静謐な世界が必要なのかも。 死者を悼むには様々な方法があると思う。この小説の登場人物達はそれを直感的に知っている。上手くは言えないけど、それが一番大事なことなのかもしれない。 不思議でどこか痛みを伴う小川洋子さんらしい小説でした。
- meru@meru1900年1月1日読み終わった失った子どもの魂を、博物館で使われなくなったガラスのショーケースに入れて、そこで歳を重ねるのを両親と共に見つめる主人公。寄り添うことはせず、香りのついた蝋燭をそっと灯すだけ。 読者もその不思議な物語を少しだけ垣間見るような感覚。