わらびもち "侍女の物語" 2025年11月10日

侍女の物語
侍女の物語
マーガレット・アトウッド
ディストピアSFは大好きなのだが、この作品はなんとなく、読んだらダメージをくらってしまいそうな気がして手を出せずにいた。 架空の国家の話なのに、全然人ごとだと思えなかった。 子を持てばなんか社会的に許されるような感じとか、「母親になれた女性」へのちょっとした羨望とか、年齢による「チャンス」のリミットとか、実際に普段感じていることと地続きで、オブフレッドの置かれた状況が生々しく感じられてちょっとしんどい面があった。 それでも読む手が止められなかったのは、過去に何があったのか・どうしてこうなってしまったのか、が読み進めるにつれてだんだん分かるようになっていて、グイグイ引きつけられてしまったから。 そして最後の「歴史的背景に関する注釈」での種明かしがすごく良かった! 作中には色んな絶望があるけども、個人的に一番絶望を感じたのはモイラの行く末かもしれない。 大胆でカッコイイ友人には、ヒーローよろしく腐った社会に一矢報いてほしいという希望。めちゃくちゃわかる。 でもご都合主義は起こらないし、役割からはみ出た女性には過酷な運命が待っている。もちろんモイラも例外ではない。 「せめて昔の友人にはなんか上手いこと生きてて欲しい」という希望すら打ち砕かれる感じ、非常に厳しい…(でも、この希望の無さがディストピアSFを好きな理由でもあるのよね) 「誓願」も読みたいな。
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