糸太
@itota-tboyt5
2025年11月10日

読み終わった
土地の凹凸はどうしてこんなにも心を湧き立たせるのだろう。足の裏からダイレクトに伝わる刺激が、目の前に広がる景色を後退させ、その土地のもう一つの姿を浮かび上がらせてくれる。
この本が見せてくれるのは、そんな遠い昔でもない「武蔵野」である。何世代か遡るだけなのに、とんだ異世界が広がっている。でもその場所は、不思議と居心地がよかった。
本文中には武蔵野を描いた文学作品が多く紹介される。さまざまな角度からの描写に触れるたび、その景色を知っているような気さえしてくる。
このあり得ない既視感のなかに、なぜか居心地のよさが潜んでいる。
光の歴史だけではなく、闇があってもなお。
人間が自然とのあわいに生きてきた記憶は、案外、いろんな所に転がっているのかもしれない。
祖父母のちょっとした仕草や神社の大木の根元に生える雑草とか、または、いま踏みしめている土地の凹凸にも。