
yomitaos
@chsy7188
2025年11月11日
営繕かるかや怪異譚
小野不由美
読み終わった
@ 自宅
昨今のホラーブームで数多の作品が世に出ているが、どれも読み口が軽いのが気にかかる。「エンタメとしてのホラー」は、怪異が簡単に姿を現しすぎる。
そんな中で読んだこちらは、ちょっと次元が違う。小野不由美の文章力もあって引き込まれるのはもちろん、たやすく怪異を出さないのに本当に怖い。
怪異をモンスターとして描くと、どうしても退治しないといけなくなる。倒して平和を取り戻したらめでたしめでたしなわけだが、この小説にはそんなカタルシスはない。帳尻を合わせ、折り合いをつけて、怪異があるままになんとかやりくりする物語だ。
これには、怪異を仮想敵として扱わない作者の労りが見受けられる。宮部みゆきが解説でも述べている通り、怪異を不仲や揉め事という言葉に置き換えると理解しやすい。世の中の出来事はなんでもあれ、簡単に退治できるものではない。大抵のことは折り合いをつけてやりくりしていくしかない。
ホラーであるのに、その丁寧な仕事ぶりに涙がこぼれる。怪異は怖い、でも退治するようなものではない。そんな新しい視点を与えてくれる傑作だ。


