
汐見
@siomi250927
2025年11月12日
傷の声
齋藤塔子
読み終わった
自傷行為・精神科への入院を繰り返す、複雑性PTSDと診断された著者の自叙伝。
平易な語り口だけど、内容は苦しいものがある。研ぎ澄まされた文章。向き合って読むのには覚悟が必要で、共感性の高い人は気をつけた方が良いかも。
著者自身が看護師として医療の道に進んだこともあり、患者側、看護側の両方の視点がある。
心の傷は、本当に癒すのが難しい。深い傷であればあるほど、おそらく完全に治すことは不可能なほどに。周りに傷ついた人がいた時、どんな言葉をかけて、何ができるのだろうか。自分がいつか深く傷つけられたら、どうやって生きていくのだろうか、など。
家族との対話のパートでは、人は人と関わって生きていかざるを得なくて、尚且つ他人の考えや経験、記憶を完全に共有することはできない。そこに生じる苦しみについても考えたりした。
安易におすすめはできないのだけど、多くの人に読んでほしいなとも思う。
p.290
"一秒でも早い手当てのために、この本を読んでくださった周囲の人達が些細な異変や微かなSOS に敏感になってくれたら。
世界中にごまんといる被害者たちの話をしているのではない。あなたの目の前にいるかもしれないたった一人のたった一秒の話をしている。"
このような思いで自身の体験を書いてくれた著者のことを、彼女自身の自己肯定感がどうであろうと私には優しく聡明な人としか思えない。こんな言葉は助けにならないとしても。
解説も良かった。






