
ふまそん
@fumason
2025年11月14日
DTOPIA
安堂ホセ
読み終わった
⭐︎⭐︎
“そして今度はその窓から、おまえが家を抜け出すときだった。両方の親たちから拒絶されて、監督責任に失敗したと判断された子供。これじゃあ国に申し訳が立たないって親たちが狼狽えている間に、おまえのほうは早々に見切りをつけていた。追い出される前に、別の国に入ればいいって。鍵を開けて窓ガラスをスライドすると、ヒュンという音とともにカーテンが網戸にへばりつく。吸い込まれるようにおまえはベランダを乗り越え、庭に飛び降りて、駆けていった。モモが驚く暇もなかった。強風がぶかぶかのスウェットをぼこぼこに波打たせて、散弾銃を浴びせたように輪郭を壊す。あのときモモは、おまえが野放しになったように感じたけど、後になって思うのは、あれは野放しじゃなくて野晒しだったってことだ。瞳が陽射しに晒されてだんだんと破壊されていくみたいに、おまえはおまえを晒し尽くして、消耗させようとしていた。全部を使い果たすための、延々とした自殺が始まっていた。やがてそれは旅になる。暴力から暴を取ってくれる場所を、
おまえは別の国を目指して、旅を始めた。いずれデートピアにも辿り着くことになる旅。いつのまにか冷凍庫はぴったりと蓋を閉じられ、右の摘出をする予定について、おまえが何かを話すことは一度もなかった。”
