
きなこ
@kinako2025
2025年11月15日
朝のピアノ 或る美学者の『愛と生の日記』
キム・ジニョン,
小笠原藤子
読み終わった
SNSで紹介されていたので読んでみたのだけれど、私が好きなタイプの文章ではなかった。
韓国の著名な哲学者であり美学者の著者が亡くなる三日前までを綴った日記が本書。
確かに闘病生活を淡々とあるいは赤裸々に描いている。
どこが好みではなかったかというと、「愛」という言葉を多用していたところ。好みが分かれるだろう。身体が病に侵されていて、不安な気持ちを奮い立たせるために感情は重要だとは思うが。
また112で、病院のカフェテラスでコーヒーを飲みながら、景色の美しさを愛でている時、通勤する人々を眺め、「みんな健康で明るく、軽い足取り。けれども彼らはこの世界の神々しさと美しさをまだ知らないだろう。わたしはもうこの世界と生に与えられた本来の祝福を知っている。この身のすべてで愛しているからだ。」という部分が共感できなかった。
哲学者でも美学者でもない、一般の労働者は無知ですか?美を理解できませんか?高尚な学問や書籍を知らなくても、生きとし生けるものの荘厳さを理解できるのではないですか?と問うてみたい気がした。
訳者あとがきに、ハン・ガンが「しばらく外国にいたとき、この本を一日いちど、三回読んだ。毎日読んでもいい本」と語ったそうだが。


