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きなこ
きなこ
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@kinako2025
三度の飯より本が好き
  • 2025年11月21日
    変な家
    変な家
    奇妙な間取りの家を巡るホラー小説家。 間取りというものは不思議で、そこに住む人を快適にさせることも不快にさせることもできる。 結局人の怨念というものは、時代を超えて鬱々と繋がり続けるものなのだと思う。
  • 2025年11月18日
    熊はどこにいるの
    リツとアイと先生は、下界から閉ざされた山奥に住んでいた。ほぼ自給自足で、僅かにぬいぐるみなどを作り販売し暮らしていた。 ある日アイと先生はバレエ公演を見に行き、帰りに立ち寄った道の駅のトイレに置き去りにされた男の赤ちゃんを拾った。 男嫌いのリツには女の子と偽り、3人の女たちは慣れない子育てを始めるが。 読み終わり、すぐタイトルの『熊はどこにいるの』の意味を考える。 登場人物の誰が口にするかで、「熊」が誰を指すのか、何を指すのかが変わってくる秀逸なタイトルだと思う。 リツもアイもユキも、ヒロやサキでさえ、女性として生きてきたせいで苦しんできたこと、社会から苦しめられてきたことが物語の隅々に感じられ、読んでいて胸が苦しくなる。(ユキは男の子だけれど、リツに一時女の子だと認識されていたので) 特にリツの生きづらさ、幼いころの性被害によるトラウマが、読んでいて辛く、社会に蔓延る性犯罪について憤りを感じずにはいられなかった。
  • 2025年11月15日
    朝のピアノ 或る美学者の『愛と生の日記』
    SNSで紹介されていたので読んでみたのだけれど、私が好きなタイプの文章ではなかった。 韓国の著名な哲学者であり美学者の著者が亡くなる三日前までを綴った日記が本書。 確かに闘病生活を淡々とあるいは赤裸々に描いている。 どこが好みではなかったかというと、「愛」という言葉を多用していたところ。好みが分かれるだろう。身体が病に侵されていて、不安な気持ちを奮い立たせるために感情は重要だとは思うが。 また112で、病院のカフェテラスでコーヒーを飲みながら、景色の美しさを愛でている時、通勤する人々を眺め、「みんな健康で明るく、軽い足取り。けれども彼らはこの世界の神々しさと美しさをまだ知らないだろう。わたしはもうこの世界と生に与えられた本来の祝福を知っている。この身のすべてで愛しているからだ。」という部分が共感できなかった。 哲学者でも美学者でもない、一般の労働者は無知ですか?美を理解できませんか?高尚な学問や書籍を知らなくても、生きとし生けるものの荘厳さを理解できるのではないですか?と問うてみたい気がした。 訳者あとがきに、ハン・ガンが「しばらく外国にいたとき、この本を一日いちど、三回読んだ。毎日読んでもいい本」と語ったそうだが。
  • 2025年11月13日
    家守綺譚 下
    家守綺譚 下
  • 2025年11月13日
    家守綺譚 上
    家守綺譚 上
    もともと原作が好きだったので購入。 絵も原作の雰囲気をそのまま纏っていて秀逸。
  • 2025年11月13日
    休養学
    休養学
    疲れは、ただゴロゴロと横になるだけでとれるものではない。「疲れ」とはどういう状態をいうのか。 「人はなぜ疲れるのか」「疲れても無理をして休まずにいると、人間の体はどうなるのか」「どんな休み方をすれば最も効果的に疲れがとれるのか」をデータ等とともに分かりやすく解説した本。
  • 2025年11月9日
    記念日
    記念日
    40代で図書館司書のソメヤは、20代のミナイのマンションでルームシェアをすることになった。若々しく健康体のミナイは、自分の体がしっくりこず、年寄りになりたいと思っている。 ソメヤは図書館で出会った70代の乙部幸子に頼まれ、彼女の40代の息子 正雄とデートさせられる。 気が進まないまま待ち合わせ場所のホテルに行くソメヤだったが。 年齢とは、自分の身体とは一体何なのだろうか。 誰しも歳をとるが、それは完全に納得してのことではなく、気がつくと体の節々がギシギシ言っているということもある。 ミナイは言う。 「自分の体を、細かい傷に色んな味のしみこんだ、丈夫でなかなか壊れないなじみの鍋みたいに思えるくらい、ただひたすら、気長に時間をかける。...」 それぞれの思いが交差して錯綜して、一緒にカレーを食べて。 人と関わることってこういうことなんだろうなと思う。
  • 2025年11月8日
    まさか私がクビですか? なぜか裁判沙汰になった人たちの告白
    新聞の書評欄で紹介してあり、興味があったので手に取った。 日経新聞電子版で連載していた『揺れた天秤』を書籍化したもの。 さまざまな裁判の内容をわかりやすく解説してあり、こうやって訴えられて裁判になるのかと、身近に感じるからこその恐怖感。 「はじめに」で触れられているように、「判決が勝ち負けを明確に示していても、単純に『勝訴』『敗訴』と割り切れることが難しい事案は珍しくありません。同じ事実でも立場が異なればまったく違って見え、双方の視点に立ってみれば、それぞれの言い分が説得力を持って響いてきます。」というのもよく分かる。 ただ、妻が里帰り出産中に女と逃げた夫が死に、遺族年金を申請し受け取ったのは女の方だという事例が何とも後味が悪い。
  • 2025年11月7日
    村田エフェンディ滞土録
    p56「やはり、現場の空気は良いものだ。立ち上がってくる古代の、今は知る由もない憂いや小さな幸福、それに笑い。戦争や政争などは歴史にも残りやすいが、そういう日常の小さな根のようなものから醸し出される感情の発露の残響は、こうして静かに耳を傾けてやらないと聞き取れない。それが遺跡から、遺物から、立ち上がり、私の心の中に直接こだまし語りかけられているようなので充実。私は幸せであった。」 『家守綺譚』の番外編。綿貫の友人、村田がトルコに留学していた時期のことを描いた小説。彼は大学の史学科在籍の講師でトルコの遺跡発掘物の整理をしていた。 彼が下宿していた屋敷にはドイツ人のオットー、ギリシャ人のディミィトリス、管理人兼家政婦のディクソン夫人、給仕のムハンマドらがいた。 それぞれの登場人物の背景や土地の人々との関係、現地にいる日本人とのやりとり、全てが細やかな描写でグイグイと物語の世界に引き込まれる。 村田が日本に帰り、その後第一次世界大戦と思われる戦争が起こる。しばらくしてディクソン夫人から届いた手紙の内容に胸が締め付けられた。 ラストで、元々はムハンマドが拾ってきた鸚鵡に村田が「ディスケ・ガウデーレ(楽しむことを学べ)」と囁きかけると、工芸品のように古びた様相の鸚鵡が叫んだ言葉。 涙無くしては読めない。 心に沁みた一冊。
  • 2025年11月6日
    あきらめません!
    会社員を定年後、夫と一緒に彼の郷里に移住した郁子。姑の隣家を買い、庭を理想のイングリッシュガーデンにし、ゆっくりと老後を楽しむはずだった。しかし図書館に行った帰りに迷い、市議会を偶然傍聴した時から彼女を取り巻く環境が大きく変化する。 垣谷美雨さんの小説はいつも女性に関する問題を取り上げ、エンタメに仕上げているのが見事というしかない。 真面目に会社員として生きてきた霧島郁子が、夫の故郷に移住してから、リアルに眼前に現れた男尊女卑の世界。東京に住んでいた郁子は、在職中に何度も心折れる経験をしていたが、ここまで直球の女性蔑視の考え方を当たり前のように口にする人を見たことがなく、若い女性議員をからかう市会議員の男たちを見て驚く。 彼女の驚きの一つひとつに共感できる。 著者は昨今の女性問題を念入りに調べたのだと感じた。ラストが明るく希望を持たせるというのも、彼女の作品が好きな理由の一つ。
  • 2025年11月1日
    やっぱり食べに行こう
    この前読んだ小説が余りにも重かったので、気分転換に食にまつわるエッセイを読む。 原田マハ氏の小説は、美術好きの私がきっと好きな内容だろうと想像できるのに、まだ『ロマンシエ』しか読んでいない。 講演会にも行って、サイン本を2冊持っているから、いつかはガーッと読みそうなんだけれど。 なぜこのエッセイを選んだかといえば、彼女の食の好みが自分と似ていたから。もちろん著名人ではないので、彼女のように高級なお店には殆ど行っていないけど。 朝食はパン派だったり、パクチーやミョウガ好き、旅先で梅干しに助けられるという共通点に興味を惹かれたというところ。 食べるという行為が自分にとても大切なものだから、このエッセイに共感した。
  • 2025年10月26日
    あなたが私を竹槍で突き殺す前に
    重い、重すぎる内容に、読み終わった今、心が悲鳴を上げている。 在日韓国人の登場人物たちの経験、思い、行動、人生が章ごとに迫ってきて、息も絶え絶えになる。 大衆とは誰か、何か、その考えは変えることができるのか。 柏木葵の人物描写が少々突拍子もない印象を受けたが、その他の登場人物のキャラクターには納得できた。 小説のところどころに挿入されている、韓国の情報に気づくと、より小説を味わうことが出来るのかもしれない。 ソンミョンの持っているリュックもキム・マヤの好んでいたブランドというのも、たぶんマリーモンドのものだと思われる。それによりそのキャラへの理解が深まるのではないか。 2020年に出版された小説だが、最初に「日本初の女性総理大臣が、あれほどまでの極右だったとは僕もすっかり騙された」という台詞があると、Xで紹介されていて読んだ。 いや、心に重い鉛を飲み込んだようだ。
  • 2025年10月23日
    サイレントシンガー
    さすが小川洋子氏。 読み終えて本を閉じても、物語世界から抜け出せない、圧倒的な吸引力。 彼女の小説は静謐で、心の奥底の一番柔らかい部分にそっと触れていくような読後感がある。 祖母に育てられたリリカは、祖母の職場の“アカシアの野辺”で過ごし成長する。 アカシアの野辺とは、内気な男性ばかりが集まって共同生活を送っている場所だった。彼らは饒舌から逃れ、静かな指言葉で意志を伝える。 アカシアの野辺で物品販売をしていた祖母の跡を継ぎ、かつ歌の仕事もするリリカの前に、料金所で仕事をする男性が現れた。 物語の舞台のモデルは兵庫県芦屋市だとか。高島市長と小川洋子さんの対談でそう語っていた。作家は様々なものを自分の中に取り込んで物語りを紡いでいくのだなと思った。
  • 2025年10月21日
    かみなりせんにょと いなづませんにょ
    かみなりせんにょと いなづませんにょ
    ノーベル文学賞作家 ハン・ガンの童話。 詩人でもある彼女らしい、情感にあふれた作品。惜しむらくは、お話が短すぎることだろうか。2人のちっちゃい仙女たちがどんなふうに下界を探検し、どんな経験をしたのか、というところまで知りたいような気がした。
  • 2025年10月20日
    落雷と祝福
    落雷と祝福
  • 2025年10月12日
    太陽諸島
    太陽諸島
    今年、ネリー・ザックス賞を受賞した多和田葉子の三部作完結編を読了。 ネリー・ザックス賞とは、 「ノーベル文学賞を受けた詩人ネリー・ザックスの名を冠した賞で、1961年に創設。2年に1度、異文化間の理解促進に貢献した文学者に贈られる。過去にはカナダのマーガレット・アトウッドさんらが受賞している。」(朝日新聞より)らしい。 『星に仄めかされて』を読んでから大分経ってしまってたけど、ネリー・ザックス賞受賞のニュースを見て思い出した次第。 最初の『地球にちりばめられて』が面白く、続編を心待ちにしながら読んだのだけれど、完結編は特に言語や国という概念をさまざまな面から見て、解釈していくプロセスがスリリングな内容だった。そもそも主人公のHirukoというのが日本神話に出てくる神なのだし、彼女と同郷だというSusanooも同様に日本神話の素戔嗚だと思われるところが特に興味を惹かれた。 バルト海を船で旅するストーリーで、それぞれの寄港地にまつわる話が盛りだくさんで、文学や絵画に精通していたら、もっと面白く感じられたのではないかと、自分の無学が残念に感じられた。
  • 2025年10月7日
    家守綺譚
    家守綺譚
    私の好きなジャンルの小説。梨木香歩さんはエッセイが巧みで、以前新聞連載のエッセイを楽しみにしていた時期があった。自然への造詣が深く、心に沁み入る作品を書く手練れ。 小説のこの作品も、同様に素敵な作品だった。 文筆家の綿貫征四郎が、亡き親友の実家を管理するために住み始めるところから話が始まる。 嵐の夜、床の間の掛け軸の中から現れた親友の高堂。 彼の勧めで飼い始めた犬のゴローと、ゴローを可愛がる隣家のおかみさん。征四郎の碁の相手の和尚。さまざまなな草木が生い茂る庭にやってくる異界の者たち。完璧に私の大好物の泉鏡花と山田章博の世界でワクワクしながら一気読み。こういうお話をもっと読んでいきたい。
  • 2025年10月6日
    おいしそうな文学。
  • 2025年9月18日
    働きたいのに働けない私たち
    働きたいのに働けない私たち
    先に読んだ『私たちに名刺が〜』と対になるような内容の本。 前者は企業等に勤めていないので名刺がないが、アンペイドワーキングや工場、食堂などで働いてきた中高年女性たちのインタビューを通して、女性の労働(女性に課せられた労働)をクローズアップしたものだったが、今回の『働きたいのに働けない私たち』は高学歴女性たちにも地獄があるというおはなし。 著者はもちろん高学歴女性(博士号取得)だが、結婚し子育てをする中で、いくたび困難な状況にさらされてきたか。 男性研究員と比較し競争をさせ、多くの業務を女性である著者に担当させ、昼夜を問わず働いた著者は体を壊し退職。比較対象だった男性研究員は正規職採用となった。日本でもよくある事例ではないだろうか。 女性がガムシャラに働いて要職に就くと、「図太い」と言われる。男性にも同様のことを言うだろうか? 韓国女性の働きづらさ、生きづらさが余すとことなく書かれているが、まるで日本のことかと思うのは、日本の女性たちも同じような境遇に置かれているということだろう。(補論にあるようにコロナ禍で既婚女性の失業率は増加している等) 韓国と比較すべくアメリカとスウェーデンの女性の労働環境も述べられている。 日本と韓国、両国の女性が置かれた劣悪な環境から脱するべく、シスターフッドで助け合っていきたいと願う。
  • 2025年9月15日
    私たちに名刺がないだけで仕事してこなかったわけじゃない
    私たちに名刺がないだけで仕事してこなかったわけじゃない
    タイトルからして共感の嵐だから、内容は言うに及ばず。サブタイトルが「韓国、女性たちの労働生活史」とあるように、女性たちの血の滲むような労働が、社会からいかに透明化されてきたかが分かる。 韓国の京郷(キョンヒャン)新聞ジェンダー企画班が2022年1月から5回新聞に連載記事として掲載したもにを本にしたもの。 訳者あとがきには「データや統計を活用しながら、これまで評価されてこなかった女性の労働が社会構造の中でどのような意味を持つのかを分析し、韓国の現代史と結びつけながら再評価することを試みている。」とある。 その結果というか、さまざまな賞を受賞している。 ・「今月の優れた報道賞」民主言論市民連合(2022年2月) ・「第378回今月の記者賞」韓国記者協会 ・創立76周年の「京郷大賞」など そしてこれを本として出版しようと始めたクラウドファンディングでは目標額300万ウォンに対して1442%を達成したという驚きの記録も持つ書籍なのだ。 本の見開きにこうある。 「私たちが出会った女性たちは、名刺がないと言っていた。仕事を休んだことは一度もない。社会が彼女たちの労働を『仕事』として認めてこなかっただけだ。」 「世の中の人たちは知らなくても、わたしは知っている。あなたがどれほどすごいことをやってきたのか」 これだけでもう胸がいっぱいになる。 社会を支えてきた名もなき女性たちの生き様が胸に迫る。
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