
ねこ
@notoneko25
2025年11月16日
マリエ
千早茜
リストから。
「すぐ疑似家族を作ろうとするのよね」
「疑似家族、ですか」
「あたしのことも、母親だったら良かったのにとか言ってたわよね」
「それは・・・・・」
「家族の役割にあてはめるほうが繋がりを実感できる?安心したい?」「まさか」と思わず声が大きくなる。「うちの家族なんてかたちだけで、安心できるような繋がりなんてありませんでしたよ」
「だからじゃないの」
マキさんはいたって冷静だった。いつも通りのハスキーな声で、ワインを口に運びなが
ら喋る。
「あんたはどっかで家族の幻想を捨てきれないのかもしれないわね。それか、あんがい家族という概念に縛られているのか」「そんなことない、です」
言い返しつつも、目を逸らしてしまった。予想外のことを言われてうまく頭が働かない。
「知っている関係におきかえなくてもいいのよ。どんな人との関係も初めてのものなんだから。かたちなんてないの」
「私は誰かといて不幸になりたくなかったし、一緒にいる人に不幸だと思われたくなかったんです」
「誰といても、決めてはいけないのだと思います」
「なにを」
「その人の幸も不幸も。それぞれで努力するしかない」
「結婚していても」
「はい。だから、別れた旦那さまを桐原さんが不幸にしたわけではないです。それも彼の問題で、桐原さんには関係のないことです」